観光が八重山から宮古へシフトしつつあることは以前ここで触れたが、日本全体で見ると中国を中心に訪日観光客は相変わらず増加傾向が続いている。日中関係の改善が背景にある。中国脅威論を盾にする陸上自衛隊配備計画は意味がないのではないか。
■46路線を認可
時事通信やNHKによると中国航空各社の日本路線が今月から急拡大する。中国民用航空局が先月公表した資料によると、年初3週間に開設認可を受けた日本行き直行便は少なくとも46路線に上っている。日中関係の改善に加え、中国人訪日客の増加に対処したものと見られている。
開設される路線の中国側発着地はすでに多くの直行便が飛んでいる北京や上海ではなく、各地域の拠点都市が中心。シルクロードで有名な新疆ウイグル自治区のウルムチと名古屋、札幌を結ぶ路線がその大半を占める一方、福岡と青島、北九州と大連、静岡と西安、長沙、富山と大連などが運航を始めるという。
北海道への中国客の増加はこれまでの報道で知られていた。その流れは今後もさらに拡大されそうである。雪へのあこがれや食べ物が影響しているのだろうか。
■無理な脅威論
このように民間レベルで交流が拡大しているのに国レベルでことさら相手の脅威を強調する意味がどこにあるのだろうか。
沖縄防衛局は環境アセスを避けるためジュマールガーデンの13㌶で年度内3月にも着工すると発表している。以前述べたように辺野古の新基地建設問題についてロシアのプーチン大統領も熟知している。中国当局が南西諸島における自衛隊基地建設について知らないはずはない。「なんて、的はずれな無駄なことをしているのか」と笑っているのかも知れない。
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」。憲法九条はこう規定している。戦争を徹底的に忌避し、この地球上から一切の国際紛争をなくそうという精神が盛り込まれている。
■他国の模範に
この理念は、他の国の模範となるものとして、国際社会の注目を集めてきた。互いの国の主権を保ちながら経済上、政治上の国境をなくそうという欧州連合(EU)の設立理念にも影響を与えたに違いない。それを改悪しようとしているのが安倍晋三首相なのである。
どうやら、自らの任期中の憲法改正には無理があると分かったのか、最近の公の場での発言からこの言葉が影をひそめている。厚生労働省における統計調査のお粗末な仕事ぶりなど目の前の問題の沈静化に躍起になっている。
去る2月1日の臨時市議会で陸自配備計画をめぐる住民投票条例案を否決した議員各位には計画の根底にある理念、憲法九条の精神をもう一度、考えてほしい。