石垣島への通年運航を続けているクルーズ船「スーパースターアクエリアス」(総㌧数5万1039㌧)が、今月から週2回の寄港を週1回に減らし、キャンセル分を宮古島にスライドしている。来年3月までの計画。運営するゲンティンクルーズライン(本社・香港)は、4月に南ぬ浜町(新港地区)で暫定供用された石垣港新港地区旅客ターミナルの機能・設備や乗客の交通機関などが不十分と指摘、石垣港F岸壁への接岸を石垣市に要望したが、可能性が低いことから運航計画を変更した。同社は今後の寄港中止も示唆しており、21年続くア号の運航が途絶える可能性が浮上している。
ゲンティンは、旅客ターミナルが暫定供用した2カ月後の6月、市にア号のF岸壁使用を求める要望書を提出。新岸壁は、周囲に防風設備がなく夏と冬に南北から強風の影響を受けやすい位置にあることから「出入港時に突風が発生すると船は非常に危険な状況になりうる」と指摘していた。新岸壁には▽雨をしのげる場所▽照明設備の拡充▽乗客へ十分な交通機関の構築-などを求めていた。
1998年からア号の船長として石垣への運航を担当している船長の見解として「北風が非常に強い冬の季節に石垣へ寄港できたのは、石垣港F岸壁の周辺に防風機能の構造物があり、十分な安全面が確保されていた」と紹介、F岸壁への使用を求めた。
市は、F岸壁の使用には荷役業者との調整が必要なため新岸壁にクルーズ船を一元化させたいと考えており、要望に対して使用を見送ると文書で回答した。
これを受け、ゲンティンは今月から月・水曜日の週2回寄港を水曜日の週1回に切り替え、月曜日は宮古島に寄港する運航計画を決めた。
この影響で、寄港キャンセルは年内に7回で最大計1万4700人、来年3月までに19回で最大約4万人の乗客を逃すことになる。
長年、ア号の乗客が訪れているユーグレナモール内の土産店で働く50代男性は「寄港回数が減ったことに疑問を感じていたが、ようやく分かった。F岸壁は荷役業者との調整もあるが、市は柔軟に対応しても良いのではないか」と注文。
八重山観光を下支えしてきたア号の寄港減に石垣市観光交流協会の大松宏昭会長は「石垣へのクルーズ観光の先駆けであるアクエリアスは大事にしたい。新岸壁の環境整備を急ぐ必要がある」と不満を募らせた。