ケータイ電話を見ながら歩く人が増えた▼未知の土地で目的地を探すために地図を表示しておき、時どき確認するような使い方ならいいが、ずっと画面を見つめたまま歩んでいる人もいて、ぶつからなければいいがと傍らで見ている方がかえって気になり落ち着かない▼先日、知人が空港発のバスで隣り合わせた若者グループについてこんな話を聞かせてくれた。そのグループは、バスに乗り込むやケータイを取り出し、八重山そばを食べるならどこがいいか、居酒屋はどこへ行こうかなどの検索、情報交換に忙しく、車窓から見える南の島の景観には、とんと無頓着だった▼走りだしたらすぐ見えるサンゴ礁の海、澄み切った空、ヤラボ並木、白保小学校のデイゴなど島特有の景観が続くのにもったいない。とうとう彼らは、ターミナルまでケータイから目を離すことがなかった▼翌日、そのグループと市役所前のそば屋で遭遇した。店内でも、ケータイ情報で盛り上がっていた。そばが運ばれて来るや、やはりケータイで写真を撮り、そのあと一斉に箸を進めて、異口同音に「おっ!ウマ(おいしい)」▼店には悪いが、こんなケータイ依存の旅でいいのかなと憂えていたら、一人が役所のデイゴに気づいたようで、あの赤い花の木は何というのですかと尋ねてきた。(仲間清隆)
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