■「わが軍」が海外に出兵
4月に入り、官公署や企業などは新たな会計年度の2015年度がスタートした。そこで重要案件がめじろ押しの国、県、3市町の新年度を展望した。
昨年7月に憲法9条を骨抜きに閣議決定された集団的自衛権行使の安保法制は、早ければいよいよ7月の今国会で成立。安倍首相の「わが軍」自衛隊は、皮肉にも不戦を誓う戦後70周年の節目に、世界のどこにでも出兵できるようになる。さらに原発も福島事故の反省もなく再稼働を始める。今、安倍政権の暴走を止めなければ、「こんなはずではなかった」になりかねない。
名護市辺野古の新基地建設も正念場だ。国の理不尽な強権に屈するか、はね返すか県民の覚悟が問われている。
さらに計画通り建設が進めば来年4月、八重山でも戦後71年目で初の軍事基地となる自衛隊基地が与那国にできる。島の未来に依然不安は拭えておらず反対住民の役割はまだ必要だ。
石垣市は観光産業に決してプラスになると思えない自衛隊配備を、自らあえて受け入れることは避けるべきだ。
■生活困窮相談と地方創生
「子どもの貧困」や「貧困の連鎖」が深刻化する中で、生活困窮者自立支援法も新たにスタートした。全国の役所に相談窓口の設置が義務付けられ、生活に困った人は同窓口で相談すれば状況に応じて住居手当や就労訓練、子どもの学習などで支援が受けられる。
加えてひとり親や障がい児のいる世帯には5千円程度のガソリン券を交付する県事業も6月から始まる。八重山3市町はこうした制度や事業が十分に生かされるようしっかり周知したい。
県の支援で波照間の航空路も8年ぶりに10月から再開される。近年は過疎が深刻だけに島の人々は航空路再開を活性化の呼び水として生かしたい。
一方で本年度からは地域活性化を後押しする国の地方創生事業も本格化。石垣市は国派遣の内閣府職員を企画部長に迎え、他の市町村と同様、年度内に5ヵ年の総合戦略を策定する。
並行して14年度補正で確保した1億7000万円の予算で、地域消費喚起や生活支援のため1万2000円の商品券を1万円で購入するプレミアム商品券発行や旧正花火大会などの事業を展開。石垣市が総合戦略のテーマに掲げた若者が安心して子育てできる産業と雇用創出のまちづくりにつなげる。
■大型事業がめじろ押し
3市町はそれぞれ多彩な事業を計画しているが、竹富町の人々には何と言っても町単独の船賃低減事業は朗報だろう。これが一括交付金の良さだ。
さらに本年度は760億円の巨大プロジェクトである国営石垣島土地改良事業をはじめ136億円の県立八重山病院新築、27億円の与那国製糖工場建て替え、14億円の登野城小改築、7億円の新火葬場建設など大型の公共事業がめじろ押しで業界の期待は大きい。
的確な事業執行と地元業者優先発注で好調な観光と共に地域経済を盛り上げたい。懸念は人手不足だ。
賃金は上がらず物価は値上がりが続き、一部の富裕層を除く大多数の国民の暮らしがさらに厳しさを増す中、この国は確実におかしな方向に進んでいる。一人一人が平和で最低限の暮らし確保にしっかり声を出すべきだ。