3年前、牛と一緒に与那国から海を渡って八重山農林高校に入学した上間睦太(ともひろ)君(18)が1日、卒業する。牛と共に過ごした青春時代。闘牛大会に2度出場し、勝つ喜びも負ける悔しさも味わった。学校では畜産に関する講習を積極的に受けてきた上間君は「本土で経験を積み、与那国の畜産を変えたい」と夢を語る。(石川勇作記者)
入学は赤毛の闘牛「与那国赤蜂」と共に。親戚の牛舎に通って世話をする毎日だったが、1年生の夏、知らぬ間に売られてしまうアクシデントに見舞われた。
上間君の落ち込みぶりは激しく、見かねた親戚の大宜見朝用さん(38)が「責任をもって世話をするなら」と別の闘牛「与那国天志」を譲った。それ以降、上間君は「彼女ができても牛優先」というほど牛に没頭。どうすれば強い牛になるか追求してきた。
大宜見さんは「睦太には助言する程度。自分でネットで調べたり、牛の気持ちを考えて世話をしている」と、牛飼いとしての資質に太鼓判。
2013年の新空港開港闘牛大会に「与那国天志」と初出場。頭を合わせた状態から一気に割り技で勝利。上間君は「あの気持ちよさは忘れられない」と振り返る。
卒業後は、岡山県の中国四国酪農大学校に進学することになっており、「人工授精師や削蹄師の免許が取れる。畜産に必要な知識は全部吸収したい」と意欲的だ。
「いずれは与那国に戻り、繁殖農家としてやっていきたい。島の畜産を変えたい」と夢を語る上間君。牛の世話を通して自分を成長させてきた18歳が故郷与那国をどう変えるのか。今後が楽しみだ。