【那覇】波照間製糖株式会社(西村憲代表)は18日、新工場となって初めて製造した黒糖に金属が混入したとして、全商品を回収(リコール)すると発表した。同社は、製糖機器を新しく整備する際に材質・設計に問題があったとしているが、混入時期については特定できないという。18日午後、県庁で会見した西村代表は「安全性を最大限配慮して全量回収を決めた」と述べ、謝罪した。現在のところ、健康被害の報告はないという。
金属が混入した黒糖は今年1月25日以降、新工場で製造された1575㌧。このうちリコールの対象は小袋商品として出荷された「波照間島産黒糖」(300㌘)と「波照間島産粉黒糖」(300㌘)の65㌧。
業務用製品として出荷された1511㌧については、出荷先の食品メーカーで二次加工の際に異物が除去される機会があるが、それでも金属片が残る可能性があるかどうか確認してもらっている。金属片が残る可能性がある場合はメーカーの判断でリコールすることになっており、すでにリコールを決定しているメーカーもあるという。
同社によると、混入した金属は、線形0・2㍉、外形2㍉、長さ150㍉のスプリング部品。最終工程の製糖機器のスプリング部品が酸化・腐食して脱落し、製造中の黒糖に混入した。スプリング部品に腐食しやすい鉄製品を使用したことや、黒糖に混入する可能性のある方向に部品を取り付ける設計だったことが原因とみている。
同社によると、製糖機器を製造した月島機械(株)も「使用上の問題ではなく製造上の問題」としており、会見で西村代表は「欠落した部品は目視できない場所にあり、このような問題が起こるとは思わなかった」と述べ、損害賠償を視野に月島機械と協議していく考えを明らかにした。
新工場では製糖期間中の2月に異物探知機が5㍉ほどの金属1個と2㍉ほどの金属4個を発見、除去したが月島機械は新しい製造ラインで腐食した金属が混入するのは想定できないとしたため、同社は「イレギュラーで混入したもの」として操業を続けた。
製糖終了後、7月に千葉県の食品メーカーが業務用の黒糖から2㍉ほどの異物を発見。同工場が再調査を行ったところ、スプリングの脱落を確認した。
同社波照間事業所の金武清也所長は「波照間製糖の歴史上、初めてのことで大変残念だ」と肩を落とし、同工場を所有する竹富町の野底忠農林水産課長は「新しい施設で異物が混入するとは思ってもいなかった。関係者におわび申し上げるとともに、再発防止に力を入れたい」と述べた。