八重山漁協の本マグロ(クロマグロ)地元消費水揚げ量が2020年度で28.2㌧と過去最多となった。前年度比の6.4倍。新型コロナの影響で県外市場に出荷する空輸便が減便した上、市場でも相場が暴落したことが要因とみられる。石垣市が販売した「おさしみクーポン券」も地元消費を後押し。地元での石垣産高級マグロの知名度向上にコロナ禍が一役買ったようだ。
地元消費水揚げ数量は20年度を除き17年度13.6㌧、18年度9.4㌧、19年度4.4㌧ 21年度10.3㌧(5月19日現在)で例年10㌧前後を推移している。
20年度は県の漁獲可能量も拡大され比較的長く操業できたため漁獲量も伸びたが、漁のピークに空輸便減便が重なり、緊急事態宣言下での飲食店休業の影響で県外市場のセリ値が下落。「捕っても送れない、送っても高く売れない」状況から地元卸しが増加した。
28.2㌧という数字に八漁協市場販売課の友利邦明課長は「ここまでだったとは」と驚き、「以前は石垣島で本マグロの水揚げがあることすら知らない人もいた。地元の人が多く口にしたことで石垣島産本マグロの知名度も上がった1年になったのでは」と振り返った。
市水産課が漁業関係者の支援と消費拡大を目的に販売した「おさしみクーポン」も売れ行きが好調。市内鮮魚店も地元産本マグロを積極的に売り出した。市担当者は「コロナがなければここまで地元に出回らない商品。クーポンを使って割安で買えたことが消費につながった」とみている。
崎原さしみ店の前仲優貴店長(36)は「うちで本マグロを購入したほとんどの方がクーポンを利用していた」と効果の大きさを実感。昨年は格安で販売した分、ことしの本マグロの価値や消費が落ち込まないか心配だったというが、「去年買いに来てくれたお客さんからの問い合わせや購入があってすぐに売り切れた。特に影響はない」と安堵の表情。地元にも本マグロの味が浸透していることを実感した様子だった。