【与那国】議長が決まらずに、議案審議に入れない与那国町議会(定数10)の異常事態に与那国町(外間守吉町長)は12日、一般会計予算の一部補正額3億9224万円を議会の承認を得ずに執行する町長の専決処分に踏み切った。町は「緊急を要する予算を編成しての対応だが、12月議会まで一時的な措置」としている。この日の議長選は与野党が互いを批判して紛糾。与党は「議長選の責任を執行側に責任転嫁することは議会の権威が失墜する」、野党は「与那国町は日本国、独裁国家ではない。全国的な慣例に沿って議長は与党から出すべきだ」と主張して膠着(こうちゃく)状態のまま閉会した。
■最終日、議場で与野党が罵声
議長選は10日目となり、午前10時の開会後、昼休憩を挟んで閉会した午後4時30分まで5回行われた。
与党の前西原武三氏と野党系の与那原繁氏が最多得票の同数で並び、地方自治法に沿ったくじ引きで当選した両者は辞退を続けた。議長選の総回数は49回。
これまでの当選人あいさつで与野党とも「辞退します」だけを述べて議長職を譲り合ってきたが、この日は両者がお互いを批判し合い、議場は罵声が飛び交った。
壇上で前西原氏は、2016年9月議会で、議員定数を10に改正する条例改正案を野党3氏の賛成多数で可決したことに触れ、「野党3氏が強行に採決した経緯があり、町民への説明責任もいまだなされていない。野党に抗議を申し入れ、辞退する」。与那原氏は「与那国町が日本の国であるならば、全国的な慣例に沿って与党側が議長を出すべきなので、辞退する」と感情的な発言が目立った。
町は閉会後、地方自治法第179条第1項の規定に基づき専決処分の手続きに入り、今議会で上程していた一般会計予算の補正額6億8088万9000円のうち、防災行政無線のデジタル化3億円、新庁舎建設の設計発注支援業務1000万円、議員増に伴う議員報酬(月額・期末手当)742万2000円など総額3億9224万7000円を優先して処理した。
残る2億8864万2000円は議長選の動向を見ながら追加の専決処分で調整する考えだ。
この対応に町の男性職員は「ついに専決処分されたか、という思い。行政と議会の溝はさらに深まった」と話し、祖納に住む40代の住民は「この島の政治には無関心が一番。関わりたくない」と足早に去った。
町総務課によると、決まらない議長選に対する抗議の電話は12日までに島内外から6件寄せられている。町議会は15日午前10時に開会して議長選を継続する。