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改憲より優先すべきもの

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 安倍首相が改憲に前のめりだ。今月24日召集予定の臨時国会に9条への自衛隊明記など4項目の憲法改正条文案の単独提示を目指す方針を固めた。

 だが、その前になすべきことがあるだろう。日本の主権を大きく損なう日米地位協定の改定である。優先順位が違う。

 ■改憲の狙いは何か

 安倍政権は2013年4月28日、サンフランシスコ講和条約発効による「日本の完全な主権回復と国際社会に復帰した日」の記念式典を開いた。

 沖縄が日本から切り離された「屈辱の日」であり、奄美の「痛恨の日」である。当然、県内は強く反発し、「政府の無神経を示すもの」などの批判があった。

 言うように日本に完全な主権はあるのだろうか。

 式典には「押しつけ憲法」を改正する国民的機運を盛り上げる狙いがあった。だが、各種世論調査は改憲に否定的。自民党内にも安倍改憲に異論が存在する。公明党も一貫して難色を示している。

 自民党改憲案の9条への自衛隊明記、緊急事態条項の創設は、「戦争できる国」へかじを切るものだ。合区解消、教育充実は政治が解決すべき課題だろう。

 ■米軍に特権を認める協定

 そもそも改憲が成就したとしても、米軍に特権を認める限り日本の主権は侵害され続ける。それが締結以来60年間、一度も改定されていない日米地位協定である。

 米軍による重大な事件・事故があるたびに政府は「運用改善」を繰り返すが、何ら抜本的な解決に至っていない。

 枚挙にいとまがない。米軍ヘリの沖国大への墜落炎上、オスプレイの名護市安部海岸墜落大破、高江の草地へのヘリ墜落炎上。日本の捜査権は及ばない。

 低空飛行を禁ずる航空法も環境法令も適用されず、米軍訓練の情報も事前通告も一切ない。

 少女暴行事件など凶悪事件でも、日本側への起訴前の身柄引き渡しは「好意的な配慮」。それも米側の裁量次第だ。地位協定あるが故の不条理である。

 このことから沖縄県は米軍基地があるドイツ、イタリアの現状を比較調査した。その結果、両国の地位協定には米軍基地への立ち入り権が明記され、米軍訓練は事前通告、承認を必要とするなど米国と対等な内容であることが判明した。

 当初から対等だった訳ではない。米軍機の事故等を契機として協定改定や補足協定締結などを重ね、自国の法律を米軍に適用するに至ったという。日本政府の対応とは雲泥の差だ。

 ■翁長さんのレガシー

 全国知事会は7月、「米軍基地負担に関する宣言」を全会一致で採択、政府に提言した。翁長前知事が「基地問題は沖縄だけの問題ではない」と強く働きかけて実現したものだ。

 提言は地位協定を改定し、事件事故の国内法の適用や米軍訓練の事前通告、基地内立ち入り権などについて明記するよう求めている。

 狭い沖縄に米軍専用施設の7割以上が集中する現状は全国的に知られるようになったが、国民に基地被害の十分な理解が行き渡っていない。「基地経済論」などの偏見も、ヘイト発言も繰り返されている。

 国内で米軍専用施設が存在するのは15都道府県。知事会提言は基地がない県の知事にも共通認識と理解を深めさせたという点で、まさしく翁長さんのレガシー(遺産)である。

 知事のほとんどが自民系である。地位協定改定は保革の問題ではない。改憲を言う前に主権侵害の状況を変えよう。これがものの道理だ。


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