台風が連れてきたのか、南の島にもこのところ秋の気配が漂い始めている。秋といえば芸術の秋。県内でもいろんな形で展覧会や舞台が増える。そんなきょうこのごろ、外電で仰天ニュースが飛び込んできた。
■落札後に細断
はるかイギリスはロンドンでの話だが、情報は世界を駆け巡る。石垣島でもテレビのニュースで知った人は多いに違いない。5日、美術作品や骨董(こっとう)品などのオークションで有名なサザビーズで正体不明の路上芸術家、バンクシー(本名、生年月日など未公表)の有名な絵画作品が104万2000ポンド(約1億5500万円)で落札された直後、額縁の裏に仕掛けられたシュレッダーで自動的に細断されたというのである。テレビ画面では縦型の額縁から中の作品だけが数㌢間隔に細断されながらスルスルと流れ落ち、ちょうど中間で止まっていた。
自らの作品に切れ目を入れる行為で連想するのはイタリアの前衛芸術家、ルチオ・フォンタナ(1899~1968)である。その代表作に「空間概念期待」(大原美術館蔵)がある。油彩で赤く塗りつぶされたキャンバスにカッターナイフのような鋭利な刃物で縦に3本の切れ目を入れた作品だ。
■風刺に主目的
世界の美術史は常に従来の美術概念を打ち壊して自らの主張を展開する歴史である。フォンタナはそれまでの美術になかった空間概念を確立、画面のみで完結せず、外へ広がる時間や空間、運動を表現した。画面の鋭い裂け目はそれを施した瞬間の音や動きが目に見えるように感じられる。
話題のバンクシーの場合は政治、社会的風刺に主眼がある。今回の落札後に細断という仕掛けも資本主義社会の象徴的な場所としてのサザビーズとそれを取り巻く現代社会に対する一流の皮肉と読めよう。美術市場では切り刻まれたおかげで逆に価格が上がるのではとの見方もあるようだが。
型紙とスプレーを使って世界の街角に現れゲリラ的に作品を描き立ち去るなぞのストリートアーチストと言われるバンクシー。作品はこれまでに単なる落書きと間違えられ、当局の清掃作業の際、消されたケースも多かったようだ。
■正体バッチリ
そんな覆面芸術家の正体がついに判明したという驚きのニュースが最近ネットで流れている。画像には作品を描いた直後らしい姿がバッチリ収められている。白いハットにモスブラウン系のハーフパンツ、黒のジャンパー、足元はスニーカーといういでたち。右手にスプレー缶、左手に型紙。場所は戦闘絶えないパレスチナのヨルダン川西岸地区の街角。聖地ベツレヘムのカトリック礼拝堂周辺らしい。たまたま現地を訪れた英国人観光客がそれと知らずに撮ったらしい。壁画作品には「地球に平和を規約と条件付」という文字が。
落書きアートといえば太い輪郭を使って簡略化した人型の作品で知られるアメリカの画家、キース・ヘリング(1958~1990)が有名だが、バンクシーはそれに比べ風刺の矛先がより先鋭化しているように見える。今回の事件。世界の目を意識した、計算し尽くした表現行為に思えてならない。 台風が連れてきたのか、南の島にもこのところ秋の気配が漂い始めている。秋といえば芸術の秋。県内でもいろんな形で展覧会や舞台が増える。そんなきょうこのごろ、外電で仰天ニュースが飛び込んできた。
■落札後に細断
はるかイギリスはロンドンでの話だが、情報は世界を駆け巡る。石垣島でもテレビのニュースで知った人は多いに違いない。5日、美術作品や骨董(こっとう)品などのオークションで有名なサザビーズで正体不明の路上芸術家、バンクシー(本名、生年月日など未公表)の有名な絵画作品が104万2000ポンド(約1億5500万円)で落札された直後、額縁の裏に仕掛けられたシュレッダーで自動的に細断されたというのである。テレビ画面では縦型の額縁から中の作品だけが数㌢間隔に細断されながらスルスルと流れ落ち、ちょうど中間で止まっていた。
自らの作品に切れ目を入れる行為で連想するのはイタリアの前衛芸術家、ルチオ・フォンタナ(1899~1968)である。その代表作に「空間概念期待」(大原美術館蔵)がある。油彩で赤く塗りつぶされたキャンバスにカッターナイフのような鋭利な刃物で縦に3本の切れ目を入れた作品だ。
■風刺に主目的
世界の美術史は常に従来の美術概念を打ち壊して自らの主張を展開する歴史である。フォンタナはそれまでの美術になかった空間概念を確立、画面のみで完結せず、外へ広がる時間や空間、運動を表現した。画面の鋭い裂け目はそれを施した瞬間の音や動きが目に見えるように感じられる。
話題のバンクシーの場合は政治、社会的風刺に主眼がある。今回の落札後に細断という仕掛けも資本主義社会の象徴的な場所としてのサザビーズとそれを取り巻く現代社会に対する一流の皮肉と読めよう。美術市場では切り刻まれたおかげで逆に価格が上がるのではとの見方もあるようだが。
型紙とスプレーを使って世界の街角に現れゲリラ的に作品を描き立ち去るなぞのストリートアーチストと言われるバンクシー。作品はこれまでに単なる落書きと間違えられ、当局の清掃作業の際、消されたケースも多かったようだ。
■正体バッチリ
そんな覆面芸術家の正体がついに判明したという驚きのニュースが最近ネットで流れている。画像には作品を描いた直後らしい姿がバッチリ収められている。白いハットにモスブラウン系のハーフパンツ、黒のジャンパー、足元はスニーカーといういでたち。右手にスプレー缶、左手に型紙。場所は戦闘絶えないパレスチナのヨルダン川西岸地区の街角。聖地ベツレヘムのカトリック礼拝堂周辺らしい。たまたま現地を訪れた英国人観光客がそれと知らずに撮ったらしい。壁画作品には「地球に平和を規約と条件付」という文字が。
落書きアートといえば太い輪郭を使って簡略化した人型の作品で知られるアメリカの画家、キース・ヘリング(1958~1990)が有名だが、バンクシーはそれに比べ風刺の矛先がより先鋭化しているように見える。今回の事件。世界の目を意識した、計算し尽くした表現行為に思えてならない。